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2025.07.31

ちいかわの「草むしり検定」について考察!

0 前書き

 今回は法律コラムではなく、国家資格コレクターの私が、とあるマンガに登場する資格について考察するものです。息抜きがてらお読みいただけますと幸いです。なお、単行本の他、各種SNSでも更新されている関係で引用を明記するのが難しかったため、省略しております。何卒ご了承ください。

1 紹介

 P.N.ナガノ先生がX(旧Twitter)で不定期連載しているマンガに「ちいかわ」があります。今回はこの「ちいかわ」の中に登場する「草むしり検定」について考察していきます。

2 「草むしり検定」とは

 ちいかわの世界でも、現実の世界と同じように仕事があり、貨幣が流通しています。討伐やシール貼りといった仕事のほか、草むしりがあります。草むしりは、頑張ってむしった草を「鎧さん」に渡すことで、報酬を受け取る仕組みになっています。

 草むしり自体は草むしり検定に合格者していなくとも実施することが出来ます。また、ちいかわの友人(?)であるハチワレ(作中で名称への言及はないですが、現実世界における猫の模様の一種で、額から鼻筋にかけて漢字の「八」の字のように毛色が白と青に分かれているため、そう呼ばれています)が草むしりをし、鎧さんのところへ持っていったところ、エリア「E」には存在しない危険な草であったことがわかり、後に「お手柄」として報酬がアップされるシーンや、草むしり検定に合格すると、草むしりの報酬が増えることを示唆するシーンがあります。

3 「草むしり検定」の具体的な内容について

(1)「級」

 ちいかわが挑戦し続け、ハチワレも合格した草むしり検定は「5級」であり、「うさぎ」(こちらもハチワレ同様に作中で名称への言及はないですが、見た目がうさぎなので、そう呼ばれています)は「3級」に合格していたほか、その後「2級」にも合格しているため、(2級が最上位であるとは考えにくいことも併せて考えると、)草むしり検定としては、少なくとも「5級」から「1級」まで存在するものと考えられます(なお、サンリオのキャラクターであるポムポムプリンが「1級」の合格証を所持していますが、本編の描写ではないためここでは割愛しました)。

(2)合格率

 ちいかわは、草むしり検定の5級を3回受験しており、初回受験時におけるハチワレの受験番号近辺(90番~110番)の合格者数は15/21で合格率が約71%、2回目受験時は気が付いたら落ちていたため作中における描写がないものの(2025/7/31現在。以下同じ)、3回目受験時におけるちいかわの受験番号近辺(73番~127番)の合格者数は30/55で合格率が約54%であり、2つのサンプルの平均合格率は約62.5%となります(うさぎが取得している「3級」及び「2級」の合格率は作中の描写がなく不明)。現実の世界における合格率約60%の資格というと、FP3級があります。

 なお、ちいかわは3回目で合格、ハチワレが1回目で合格しています。ちいかわは複数冊の問題集(テキスト?)を使用していたのに対し、ハチワレは古本屋で購入した中古の1冊のみで勉強していたようです。余談ですが、現実の試験勉強においても、複数冊に手を出すよりは1冊に集中する方が勉強の効率が良いとされ、情報の一元化の観点からも優れているとされることからも、草むしり検定に挑む2匹の主人公から、資格試験の勉強方法の“解”を垣間見ることが出来るように思います。

(3)出願時期、受験資格及び受験料

 作中では、出願時期、受験資格及び受験料に関する描写はありません。

 なお、ちいかわ世界といえども、受験料が無料ということは考えにくいように思われます。

(4)試験内容

 具体的にどのような問題が出題されるのかに関する描写はありません。もっとも、ちいかわに対してハチワレが「絶対にむしっちゃいけない草は何でしょうか」、「触るとかぶれちゃう金色の草は何でしょうか」や「根っこが長すぎる場合の対処…」と口頭で出題しており、これに対してちいかわがすぐに答えていることや、「草むしり模試」がすぐに採点されていることからすると、選択式又は簡単な記述式の問題ではないかと考えられます。

(5)資格の種類及び検定実施団体

 現実の世界では、資格の種類は国家資格、民間資格の2つに大別できます(公的資格も存在しますが、公的機関の後援を受けている民間資格を公的資格と呼ぶため、ここでは割愛します)。例えば英検の場合、その実施団体は「公益財団法人 日本英語検定協会」であり、民間資格となります。ちいかわの世界に「国」という概念が存在するかについて作中での描写がないため不明ですが、現実に即して考えるのであれば、草むしり検定は民間資格ということになります。

(6)資格の性質

 現実の世界では、国家資格には、業務独占資格、名称独占資格、設置義務資格及び技能検定の4類型存在します。業務独占資格は、例えば弁護士のように有資格者以外が携わることが禁止されている業務を独占的に実施できる資格であり、名称独占資格は中小企業診断士のように有資格者以外が当該名称を名乗ることが認められていない資格です。設置義務資格は、食品衛生責任者のように特定の事業を実施する際に法律で設置が義務付けられている資格であり、技能検定は業務知識や技能等を評価するものです。

 前述のとおり、草むしり検定は民間資格であると考えていますが、仮に、ちいかわの世界に国が存在し、草むしり検定が草むしり法のような法制度に基づき付与される国家資格であった場合、上記類型のいずれに該当すると考えられるでしょうか。

 まず、ハチワレは5級を所持しており、エリア「E」での草むしりを実施しています。「E」は5番目のアルファベットであることからすると、級に対応したアルファベットを付されたエリアでの草むしりが実施可能になると考えられます(3級であればエリアC等)。また、草むしり検定に合格していないちいかわが草むしりを実施していたことも併せて考えると、級に対応したアルファベットの付されたエリアのほか、草むしり検定未合格者が草むしり可能なエリアも存在すると考えるのが素直であり、草むしり検定は、合格前でも草むしりを実施でき、級に応じたエリアでの草むしりが可能であるという意味で、段階的な業務独占資格であると考えられます。

 なお、現実の世界においても、例えば測量士補と測量士のように、段階的な業務独占資格といえるような資格が存在します(測量士は測量のほか、測量に関する計画の作成も可能な一方で、測量士補は測量士が作成した計画を基に測量が実施できるのみです。測量法第48条第2項、第3項)。

(7)「合格証」について

 草むしり検定の「合格証」は、級の表示と合格者の写真が貼付されるデザインとなっています(作中ではオモテ面のみ描写があり、裏面については描写されていません。なお、各種グッズにおいては製品化の都合上裏面も制作されていますが、本編での描写ではないためここでは割愛します)。

 級の表示、写真付きであるというのは、前述のとおり、級に対応したアルファベットの付されたエリアにおける草むしりの実施にあたっての本人確認のためだと考えられます。現実世界でいえば、運転免許証を想起して頂くとわかりやすいと思います。また、車両の運転にあたっては運転免許証の携帯が求められていますが(道路交通法第8条第4項)、草むしり検定の合格証については、作業中の携帯についての描写はありません(運転免許証とパラレルに考えるのであれば、草むしり作業中の携帯が求められていると考えることに違和感はありません)。

 なお、ちいかわが5級に合格した際、合格したことの現実感がないのか、やや焦点があっていない目の写真が合格証に貼付されていましたが、本人確認の観点からすると、ちいかわ本人と判断される可能性が低くなるものといわざるを得ず、今後、エリアEでの草むしり実施時に、鎧さんに止められるちいかわを見ることが出来るかもしれません。

4 雑感

 草むしり検定5級の合格率は約62.5%程度であり、現実世界のFP3級の合格率と同程度であることは前述のとおりなところ、あくまで私の体感レベルですが、合格率約62.5%というのは、多少は勉強しないとあっさり不合格になるラインだと感じます。 また、ちいかわが初めて受験した草むしり検定の合格発表日が2020年10月25日、3回目の合格発表が2025年7月3日であり、現実世界では4年9カ月程度空いていたこともあり、ちいかわが合格した際には、Yahoo! ニュースにも掲載され、ちいかわの社会的影響力の大きさを感じました。今後、ちいかわ世界の「草むしり検定」が受験できるようになった暁には、私も取得を目指したいと考えています。

本TOPICSの執筆者:市川雷

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